162. 明らかな間違いへの対応
- 2017年04月20日
- 校正
戒め:「有情」(うじょう・ゆうじょう、→非情・→無情)という熟語を見たことがなくても、それは知らないだけで「友情」の間違いではありません。
組版の現場でも4月にフレッシュなスタッフを迎えました。これから組版・DTPの仕事をはじめるにあたり、色々なことを教育していかなければなりません。新人には、「明らかな原稿の間違い」と思われるものに遭遇した時の対処を、どのように教えておくとよいのでしょうか。
昔ながらの出版物の組版の現場でのイメージでは、たとえ明らかに間違いと思われるものであっても、「原稿の指示・赤字のとおりに組版、修正する」が基本的なスタンスです。これを逸脱する行為は、厳禁でした。勝手な判断で、一文字でも直してしまうと、直した方の責任を問われかねないからでもありました(ただし、一部編集も請け負っているような場合は別です)。
組版会社でも、疑問に思った点や気が付いた点等を、付箋へのメモやメールなどで申し送りをするという手法をとる会社もあります。特に、印刷直前の後の工程がない場面では、版元や発注元への確認作業が必要になる場合もあります。
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組版の現場での考え方をいくつかまとめておきます。
① | 組版・印刷会社としての基本的なスタンス |
《どの仕事にも当てはまる基本》たとえ作業者が「明らかに間違い」と思う内容であっても、組版指定、修正指示(朱字)どおり、「原稿どおり」に作業を行う。いわゆる「てにをは(助詞)」が適切でないと感じる部分もそのまま。→【対応】必要に応じて、付箋などで申し送り(コメントを残す)。書いてあるとおりにしておくのが基本。表記が複数あるもののうちの1つであるかもしれないので(例:まぬかれる、まぬがれる)。 |
② | 連番の不備や修正指示のモレは、直すことも | |
・ | 章、節などの連番の間違い | |
修正指示にふり間違い等が明らかな場合は、直しておく(必要に応じて申し送り)。 例:1.1節→1.2節→1.4節 | ||
・ | 統一の指示のヌケ | |
原稿や校正紙に、○印等で「○=××に修正」と一律に表記統一の修正指示があるが、検索すると○印が付いていない箇所を発見した場合→【対応】作業監督者が正否を判断の上、修正したことがわかるように、作業チェックマークや申し送りの上で修正を行う。 | ||
・ | 文末に「、、」「。。」等のケアレスミスによると思われる重複など。 |
③ | 責了後、校了後等、下版の直前での対応 | |
そのまま印刷されては困る(かもしれない)ので、客観的に間違いかどうか回りの人やWeb検索等で確認の上、版元への確認を行う。 | ||
あくまでも、自分たちが知らないこと、知らない単語は世の中には沢山あることを自覚しつつ、「謙虚な姿勢」で作業をすることが大事になるでしょう。
また、扱っている案件によって(出版物、カタログ、取説か等)、あるいは版元や発注元の考え方やそれまでの取引の深さによっては、伝統的なやり方だけが正しいとは言えない場面もでてきます。さらに踏み込んで表記の統一や内容にかかわる必要がある仕事もあるでしょう。経験の豊富な先輩が「そこまでやるのか!」というレベルこそが、お客様が求めていることで、商売のできるところかもしれません。
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