86. 諸橋大漢和辞典があります
- 2015年07月03日
- その他
文京組版では、A4版・全13巻の『大漢和辞典』諸橋轍次、昭和59~61年(1984~1986)、大修館書店の修訂版を所有しています。現在でも修訂第2版(B5版・全15巻)が売られていて、1セット24万円+税だそうです(古いものはネットオークションで2~4万円位から?)。
電算写植時代~DTP初期の時代には、大漢和辞典の親文字を作字する際の原稿としたり、親文字5万余字を収録する大漢和辞典に収録されていない字は“嘘字”かもしれない(「こんな漢字は見たことない!」)、という際の根拠にしたりしていました。一番使っていたのは、文京区内の大学の創立者が明治中期~大正時代にかけて出版した著作を、二十年余りにわたって現代表記化し出版する仕事を、一部原稿作成からお手伝いしていた頃でしょうか。
組版作業でわざわざ大漢和にあたるということは、見たことのない字で、ほぼ読めない字になるので、目当ての漢字にたどり着くためには、まず索引巻で部首・画数で探し、何巻の何頁に掲載されているか確認し、その巻を出してきて探す、という手順をとっていました。1冊ずつがずしりと重く、全13巻を並べるとやわなスチール製の棚はひしゃげます。
現在おもに使用されているOpenTypeフォント、Adobe-Japan1-6では漢字14,663字があるそうで、一般的な領域の専門書等では、DTPで出力できない漢字を作字する機会もほとんどなくなりました。
今では何のために置いてあるのか、社内でもわからない人が大半でほとんど手に取る人もいませんが、実用的な価値ではなく、組版・DTPや校正に携わる人にとって歴史的・文化的価値を醸し出す何かが、いまだデジタル化されていない紙の本の大漢和辞典にはあるのかもしれません(捨てないでくださいね)。
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