89. 省くことのできる複合の語の送り仮名


原稿整理の赤字をWordで修正していると、複合の語の送り仮名を”取り扱う”→”取扱う”のように、1語目の送り仮名をトルとするものを見かけることがあります「送り仮名の付け方」通則〈許容のルール「読み間違えるおそれのない場合は、…、送り仮名を省くことができる*1 にもとづくもので〈本則〉だとそれぞれの語に送り仮名が付くものを、あえて省いています。これは〈本則に従うと、語形が長くな(ひいては、表現が締まらないという欠点*2 がある、という感覚によるものなのでしょうか。

「読み間違えるおそれのない場合」のものは、通則〈本則〉-(1)活用のある語の用例に示されている“書き抜く“流れ込む“申し込む”のうちでは〈許容〉の送り仮名を省く用例で示されているのは“書き抜(書抜く”と“申し込む(申込む”のみです“流れ込む”は、類例の“流し込む”と読み間違えるおそれがあるので“流込む”とはできません。

一般的な書籍では、複合の語も送り仮名を省かない〈本則〉とすることが多いので、ときどき〈許容〉をとるものを見ると固い・高級な感じを受けます。また、活用のある語と活用のない(活用のある語から転じた名詞などを分けて、送り仮名を省略しない/するのようなやり方もあるようです。ただ、「〈許容を優先すると、許容に従う一つ一つの語を取り決めるとともに、その一つ一つを覚えていかなければならないという問題*2 もあり、簡単ではなさそうです。

IME、ATOKなどの変換では、オプションで送り仮名の設定を〈本則〉のみとすることはできるようですが、原稿整理または校正の段階で、複合の語の送り仮名を省く〈許容〉の方をとるには、ひとつひとつ手間をかけて修正指示を入れて、直し(または、検索置換していく必要がありそうです。

*1 内閣告示「送り仮名の付け方」複合の語 通則6
本則は「複合の語の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。」となっている。

*2 Q「打ち合わせ」と「打合せ、送り仮名はどちらを使えばよいのでしょうか,ATOKの辞書を語る―変換辞書をめぐるFAQ,ジャストシステム・ATOK監修委員会(2015年7月9日検索)

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