89. 省くことのできる複合の語の送り仮名
- 2015年07月10日
- 用字用語
原稿整理の赤字をWordで修正していると、複合の語の送り仮名を”取り扱う”→”取扱う”のように、1語目の送り仮名をトルとするものを見かけることがあります。「送り仮名の付け方」通則6〈許容〉のルール「読み間違えるおそれのない場合は、…、送り仮名を省くことができる」*1 にもとづくもので、〈本則〉だとそれぞれの語に送り仮名が付くものを、あえて省いています。これは「〈本則〉に従うと、語形が長くなる(ひいては、表現が締まらない)という欠点」*2 がある、という感覚によるものなのでしょうか。
「読み間違えるおそれのない場合」のものは、通則6〈本則〉-(1)活用のある語の用例に示されている“書き抜く”“流れ込む”“申し込む”のうちでは、〈許容〉の送り仮名を省く用例で示されているのは、“書き抜く(書抜く)”と“申し込む(申込む)”のみです。“流れ込む”は、類例の“流し込む”と読み間違えるおそれがあるので、“流込む”とはできません。
一般的な書籍では、複合の語も送り仮名を省かない〈本則〉とすることが多いので、ときどき、〈許容〉をとるものを見ると固い・高級な感じを受けます。また、活用のある語と活用のない語(活用のある語から転じた名詞など)を分けて、送り仮名を省略しない/するのようなやり方もあるようです。ただ、「〈許容〉を優先すると、許容に従う一つ一つの語を取り決めるとともに、その一つ一つを覚えていかなければならないという問題」*2 もあり、簡単ではなさそうです。
IME、ATOKなどの変換では、オプションで送り仮名の設定を〈本則〉のみとすることはできるようですが、原稿整理または校正の段階で、複合の語の送り仮名を省く〈許容〉の方をとるには、ひとつひとつ手間をかけて修正指示を入れて、直して(または、検索置換して)いく必要がありそうです。
*1 内閣告示「送り仮名の付け方」複合の語 通則6
本則は「複合の語の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。」となっている。
*2 Q.「打ち合わせ」と「打合せ」、送り仮名はどちらを使えばよいのでしょうか,ATOKの辞書を語る―変換辞書をめぐるFAQ,ジャストシステム・ATOK監修委員会(2015年7月9日検索)
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