119. かぎ括弧内の2行目以降を1字下げる
- 2016年03月07日
- 組版・DTP
かぎ括弧内の会話文や引用文が複数行になるときに、2行目以降をすべて1字下げる(行頭を1マス空ける)ことがあります。タテ組みでも、ヨコ組みでもみかけます。
個人的には、こども用の絵本でよく見る印象があります。会話文主体の絵本では、誰が話しているのかをかぎ括弧でくくることにより区別していて、かぎ括弧を使う頻度が高くなるためでしょうか。また、教科書・指導書、学習参考書、専門書などで、それが会話文や引用文であることを示すかぎ括弧内でも、そのように指示されることがあります。
こんな感じ。
「 | ●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●」 |
ソロエル
2行目以降を1字下げしないで組むこともあるでしょう(こちらの方がより一般的)。
「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●」
これでもベタ組なら文字はグリッドできっちり揃うのですが、行頭を1字下げすることで、起こしのカギ括弧(「)が目立つとともに、行頭が揃っていて、よりスッキリした見た目になるということでしょうか。
Webで、この組み方に何か名前はないのかと探していたら、ルーツの1つと思われる説明*を見つけました。「小学校の国語教科書では、明治36年の第1期国定教科書以来ずっと、会話文の2行目以降を1字下げる書き表し方が採られてきました。」とのことです。1字下げすることにより、かぎ括弧が埋没せず、会話文と地の文が視覚的にもはっきり区別できて読みやすい、ということのようです。「ただし、これは小学校教科書独特の表記法で、書籍・新聞・雑誌などでは、2行目以降を1字下げしないのが一般的です」。よって、中学校教科書は、「世の中一般に広く採られている表記法に慣れることを優先するという意図がある」ため、2行目以降を1字下げしないで書き表します、とのことです。
*参考資料:
中学校「新しい国語」Questions & Answers 教科書に関する質問事例を紹介します。
◆1字下げについて
http://www.tokyo-shoseki.co.jp/question/j/kokugo.html#q3
(東京書籍)
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おまけ
書籍の原稿作成に使われるWord 2013の段落設定では、“最初の行:ぶら下げ、幅:1字”で、この組み方ができます。組版・DTP作業者は原稿の見た目にそって組版する習性があるので、原稿作成時に該当部分にスタイルを適用*して、出来上がりのとおりに作っておく(=指示する)のが早道かもしれません。加えて、ソロエル旨を赤で注記しておけば完璧です。
* | Word 2013では、段落設定などを個別に変更すると、自動的にスタイルとして登録されるようです。ホーム―スタイルのウィンドウを開くと、一覧が表示され、該当のスタイルをクリックすると、その設定が適用されます。 |
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