151. 発音記号の組版
- 2017年01月20日
- 組版・DTP
英語「発音記号」の組版は、特殊な文字や記号( æ ə ʌ ɔ ŋθð ʃ ʒ ː 等)を使い、立体やイタリック体の使い分け等も少し複雑で、「難易度が高い」「高度な」ものと言われています。
しかし、難易度が高いと言われる理由は、他のところにもありそうです。ひとつは、原稿を執筆・作成する際に使うフォントにより、入力データ(文字コード)が様々であること。さらに、組版する方のフォントも文字コードが色々で、過去の組版データを一部そのまま流用するときでも、異なるフォントだと簡単にはいきません。また、必要なアクセント記号を含む文字が揃っていない指定フォントを使わなければならないこともあります。そんなこんなで、「支給された入力データのまま、指定されたフォントをあてるだけ」では組版できない、というところが“難易度が高い”といわれる理由でしょうか。
組版の現場では、語学書の案件で、何度か発音記号の組版を行っていますが、その都度、使うフォントや支給テキストの文字コードが異なり、その仕事毎に個別のコード変換等の対応が必要になっています。
きっちりと発音記号を組版するには、発音記号の表記に必要となる標準的なキャラクター一式が揃っているモリサワの専用フォント「学参欧文 Century Phonetic」を使うのがよいのでしょう。文字の幅に合わせて、アクセント記号の左右の長さも微妙に調整してデザインされています。ただし、文字コードが独自のもので、通常の欧文フォントとは違うことから、テキスト支給の場合になかなか使うチャンスがありません(このフォントを使う指定があれば、文字変換のテーブルを作成して対応できそうですが)。
また、クォーク エクスプレスの時代から使われていた発音記号フォント「発音記号SHB」で原稿データや組版データが作られることもあるでしょう。こちらも独自の文字コードで、発音記号では使わない大文字 GHIJKLMN 等のエリアには、小文字のイタリック体 ghijklmn が割り当てられていたりします。
OpenTypeの欧文フォント(Times New Roman等)で、入稿データをできるだけ有効に使って組版することもあります。この際には、第2アクセント付き記号のうち、以下の4つは、各文字( æ ə ʌ ɔ )と「 ̀ 」の2文字分を組み合わせて表示します。
æ̀ ə` ʌ` ɔ`
~おまけ~
Web上の英語辞書の発音記号をみると、いくつかの流儀があるようです。graphicという単語の発音でみると、アクセント記号や小文字のiの文字は違うものが使われることもあるようです。
grˈæfɪk grǽfik
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