153. 行き違う、書体の変更(ヒラギノ角ゴシック体 Pro)
- 2017年02月03日
- その他
小見出のフォントに「ウエイト-1」という修正指示で、DTP作業者から、「-1(ひとつ細いウエイト)とすると、本文書体と一緒になるのでイキとしました」との申し送りがありました。小見出しは結構太くみえて、本文フォントとの間の太さのウエイトもありそうに見えるのですが。
この行き違いは、“ヒラギノ角ゴシック体 Pro”が使われているところで起きていました。Webで「ヒラギノ角ゴシック体」と検索してみると、SCREENやモリサワのページで、W0・W1・W2・W3・W4・W5・W6・W7・W8・W9の計10ウエイトのリストを見ることができます(Webのフォントリストでは、ProやStdの表記は見当たりませんが)。
Std書体よりも収録文字数の多いPro書体である、“ヒラギノ角ゴシック体 Pro”(JIS2004字形対応版の“ProN”や“Pr6N”も同じ)には、W6(結構太い)とW3(細め)の2つのウエイトしかありません。DTP作業者は、フォント名が違うProとStdはまったく別のフォントという認識をします。さらに、収録されている文字数の多いPro書体から少ないStd書体に変えると、文字化けの可能性があることを知っているので、具体的にフォント名を示した変更指示がない限り、そのリスクを冒す変更をすることはできません。
DTP作業者は、インストールされているフォントがプルダウンメニューで、フォント名に含まれている“Pro”や“Std”、“W3”や“W6”が、すべて見えているけれども、編集・校正をする人は、どこにどのフォントが使われているのか、フォーマットを明示するものが手元にないと、印字されているフォントを見ているだけでは確認することが難しいこともあります。
これが、フォント名が、見えている人VS見えていない人のギャップによる、行き違いです。見えていないで校正せざるをえない側は、なんとか見えるように環境を整える(組版フォーマットの見える化→フォーマットの作成を指示する)か、フォント関連の知識やWebでの検索のノウハウを身に付けることが必要かもしれません。
(参考サイト)
・書体と製品の早見表(どの書体がどの製品に入っているかが一目でわかる、ヒラギノフォントの各書体と製品の早見表)
~おまけ~
出力の現場では、20年ほど前からヒラギノフォントのCTPでの出力実績があります。MacOSに搭載されてからは、度重なるフォントのバージョンアップ等により、ときどき文字化け等のトラブルも経験してきました。ここ1~2年でも、MacOSに搭載のヒラギノフォントに変更がありました。互換性については、なかなか複雑そうで何をどうすればよいのか、DTP制作者がきちんと理解して運用することは、ハードルが高そうです。出力データを受ける側のDTP作業者も、すべてをきちんと把握できていないこともあり得ます。「印刷所に入稿するデータは、すべて印刷用PDFの完全データとしている」という場合を除き、ヒラギノフォントは、MacOSに搭載されているものではなく、MORISAWA PASSPORTなどで提供される製品版のみを使って、フォントバージョンも確実に伝達することが、出力トラブル回避の1つの道なのでしょうか。
・ヒラギノフォントとMac OS Xのバージョン相関表(2016年9月21日更新)
・macOS Sierra(10.12)搭載のヒラギノフォントについて(2016年9月21日掲載)
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