166. 字面の大きい小塚書体
- 2017年05月29日
- その他
リュウミンで出力されている初校ゲラ(ヨコ組)を見て、「ずいぶん文字が小さいなー(本当にこれでいいの!?)」と感じたものが、再校で小塚明朝に変わっていて、1行に入る文字数は同じなのに、「文字が大きくなって見やすいなー(これなら大丈夫)」、と感じたことがありました。
アドビの小塚明朝は、字面(じづら)が大きくデザインされたフォントなのですねー。それまでは、特別に意識したことはありませんでした。
「字面が大きい」というのは、同じ文字サイズ、たとえば同じ11Qで並べたときに、文字の形をした部分が大きく見える、ということです。字面が大きいフォントを使うと、ワンランク大きく見えるのに入る文字数は同じというメリットがあります。最低12Qの文字サイズにしたいところで、11Qでも同程度の大きさに見えるということです。
特に、小さいサイズでは、可読性の違いが大きくなることがあります。
字面が大きいフォントは、文字の周りの余白が少ないため、文字を並べた時に行が整然と並んで見えるという効果もあるようです。組版の現場では、医療系メーカー様のカタログで、小塚フォントを使うことが「決まり」になっているものもあります。反対に、文字の周りの余白の少なさから、字間が詰まって見えたり、行間を通常より少し広めにとらないと、可読性が損なわれることもあるかもしれません。
また、字面が大きいフォントは、タテ組み(正体のベタ組)にすると、読みにくいという意見もあるようです。タテ組みで行長が長い書籍等では、字面が小さ目な伝統的なフォントで組版されたものを見る機会が多いからでしょうか。逆に、横組みで読みにくさを感じにくいのは、詰め組みなどで字間が狭いものを見慣れているから、かもしれません。
参考:ほかの書体とくらべてみよう!【漢字字面篇】(字游工房)
~おまけ~
ぱっと見たときに、版面が“黒っぽく見える”印刷物に遭遇することがあります。文字サイズは大きいのに、なかなか読む気持ちになれない、というものです。本文やネームに太い書体が使われているとそう感じることが多いのでしょうか(普段見ているモノとの差、慣れも大きいのかもしれません)。文字サイズを大きくするだけでなく、他の要素も調整しないと可読性を高めることができない、ということもあるでしょう。フォントの選定(どのウェイトを使うかも)や、文字サイズ、1行の文字数、字送り(ベタ/詰め組)、行送り設定のバランスは、デザインセンスを求められるものです。誰もが使えるワープロが普及してから、かれこれ30年ですが、よりよい出版物を作るためには、まだまだ、エディトリアルデザイナーや組版業者の出る幕はありそうです。
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