177. 原稿どおりの字形とするためNフォントを指定
- 2017年09月21日
- その他
再度、「Nフォント」の話です。出版の界隈では、まだまだ、認知度が上がっているとは言えない状況なのでしょうか(一部でのみ、当たりまえとなっている?)。書籍・雑誌のエディトリアルデザイナーの方、字形にこだわり*1がある専門書・雑誌等を編集・校正されている方には、ぜひ知っておいていただきたい事案です。
*1:“正字”にする規定がある、指示をしている、赤字を入れている(「葛」は、中が“ヒ”ではなく、“人”とする、等)。一方で、公共放送の某番組のテロップでは、葛藤の“葛”は、今でも中が“ヒ”(いわゆる拡張新字体)の方をよく見かけます。これが気になるのは、校正に携わる人だけかもしれません。
〔使用フォント〕
・左側:A-OTF リュウミン Pr6(JIS90対応)
・右側:A-OTF リュウミン Pr6N(JIS2004対応)
いまでも、これらの漢字が原稿にあるときに、原稿整理や校正で一つずつ字形の指示が入っているものを見かけます。また、校正の時には、これらの漢字は字形に注意して見ることが身体にしみついている、という方もいらっしゃるでしょう。しかし、すでに、これらは適切なフォントの選択でシンプルに解決することが可能になっています。
2004年のJIS改定(JIS X 0213:2004)で、一般的な出版物で使われる“正字”の字形に変更された漢字があります。書籍・雑誌の原稿作成で使われる、今時のパソコンに搭載されている、MS明朝やMSゴシック等で見本組の漢字を入力すると、右側の字形で表示されます。この新しいフォントの環境が整ってからほぼ10年が経過しています。マシンは入れ替わり、Windows XP等の古いOSのサポートもすでに終了し、古い環境はなくなりつつあります。DTPのフォントもライセンス契約で自由に使えるようになっています。後は、使い方しだいです。レイアウトフォーマットの作成でJIS2004に対応しているNフォントを指定すれば、(一部例外の字を除き)“原稿=ゲラ”が実現できるはずです(Nフォント以外を指定すると、JIS2004で字形変更された168文字が、字形変更される前のJIS90の字形でゲラに出力されるということです)。
◆“原稿=ゲラ”を実現するためには
本文書体には、JIS 2004対応の“Nフォント”(フォント名の末尾に、ProN、StdN等のNが付くもの)を使うことをルールとする。
《JIS2004対応しているフォント名の例》
・A-OTFリュウミン Pr6N
・FOT-ニューロダンProN
・ヒラギノ角ゴProN
注意:デザイン書体などで、Nフォントがないものも、まだまだあります。フォントによっては、いままでどおりの字形の指示が必要になります。
さらに、原稿データの作成には、Windows 7以上、JIS2004に対応したフォント(MS明朝、MSゴシック等)を使用し、適切にプリントする*2ことが前提条件となります。Windows XPで原稿を作ることは、NGです。これで、ほぼスッキリ仕事ができるようになるはずです。
*2:MS明朝が複合機の古い字形の明朝に置き換わらないように出力する必要があります→「 31. フォントによって字体が変わる「葛」」参照。
古い字形のフォントを使っているから、この漢字の字形が原稿と違ってしまうんだよねー、と分かっているのに、フォントを指定する権限のある方(フォーマットを作るエディトリアルデザイナーや、デザインの承認をしている編集者等)のところまで、具体的な対処法=提案の声が届かないところで作業している校正担当の方々は、いつまでも変わらない状況にイライラしているかもしれません。すでに、前世紀の伝統的なやり方から、脱却すべきタイミングを過ぎています。原稿整理で指示をする方々は、フォントの選定についての決定権があるはずです。
参考:
Nフォント(モリサワ:フォント用語集)
Adobe-Japan1-6 フォントの JIS90 年版と JIS2004 年版の字形差(モリサワ:pdf)
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