38. 書籍でUDフォント
- 2014年05月16日
- 組版・DTP
組版の現場で、専門書の本文書体として明朝系のUDフォント(ユニバーサルデザイン・フォント)が使われている案件を見かけました。UDフォントは、できるだけ多くの人が利用可能であるように設計する「ユニバーサルデザイン」のコンセプトに基づいたフォントです。あるフォントメーカーは、「文字のかたちがわかりやすいこと」「文章が読みやすいこと」「読みまちがえにくいこと」を開発コンセプトとして掲げています。
いつも一般的な明朝体を見慣れている目で、明朝系のUDフォントで組んだ印刷物の見本を見ると、版面の全体が少し黒っぽい印象を受けましたが、読み進めるうちに慣れてくるように感じました。何がそういう印象を与えるのか、フォントを比べると以下のような違いがありました。
従来の明朝体は、漢字の横線は細く、縦線が太くデザインされたものでした。この横線の細さは、明朝体らしい品格を醸し出す一方で、読む環境、印刷の状態、また見る人の視認力によってはかすれてしまい、視認性が損なわれる要因にもなっていました。UDフォントは、横線を少し太くすることにより、より高い視認性と可読性を実現しているようです。
UDフォントを使用することで、病気・事故・加齢等で視機能に障害を受けた人、加齢によって近い距離でのピント調整が困難な人でも、通常使用している書体より判別がしやすく、効率的に読めるようになることが期待されています。
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