208. 段落1字下げの指示に改行記号
- 2018年10月18日
- 校正
初校戻りの修正時に、段落1字下げがされていない行頭に、「」と指示されている箇所が、段落の前に1行アキで内校正に回ってきました。なぜ、1行アキにする?と思いましたが、冷静に考えると「」は、「改行に変更する」の校正記号と同じです。慣れていない作業者の素直な反応、ということも言えるのかも知れません。
原稿整理(組版指定)された原稿を長年見ていると、改行を変更する記号は、ときに段落1字下げのみを意味することに、何の疑問も生じなくなっていますが、確かに、校正記号の改行の記号と同じ形です。ことばと同様、記号も、場面ごとに意味が変わる、ということですね。
この校正記号は、段落の途中に書かれている場合は、「改行し、さらに段落1字下げ」のセットが基本で、改行行頭を天つきとする場合は、“下ゲズ”または“天ツキ”と別途注記する、ものとされています。
テキストデータ支給で組版する時代でも、原稿整理(組版指定)で段落行頭位置を明確に示すことは、それなりに意味のあることです。DTPの素材となるWordの段落行頭のデータの状態は、全角スペースがはいっているもの、見た目は同じでも自動で字下げとなっているもの、さまざまです。InDesignで組版する際にも、いくつかの段落1字下げの方法があるようです。支給のテキストデータがどのような状態でも、上手に段落1字下げする工夫がされているDTPデータを見かけることもあります。
通常は、記号が書かれた行頭の状況により、無意識に識別して作業します。
この場合は、通常の1字下げを指示するための校正記号も使われます。
前後の組版の状況等を含めて、組版・校正の常識の中で、このような使われ方がされていると思われます。昭和の頃の『校正技術 上巻』(日本エディタースクール出版部、昭和47年)のp.67・図6・7 原稿整理の例の図版(写真)として、改行の箇所を示す記号として、この記号が使われているのを見ることができます。この本の脚注に“原稿整理の入朱”の説明の中に、「校正記号のような一定のルールがあるわけではなく、……原稿が分かりやすい状態にするというのが要点である。」という記述も見られます。
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