211. CJK統合漢字のワナ(猜・靜)
- 2018年12月20日
- 校正
台湾語学書の仕事で、原稿では猜の旁(つくり)が青の「」で印字されていたのに、上がってきた組版後のゲラでは、靑の「」となっていたことがありました。
別の案件で、論文誌の原稿データの著者名が、見慣れない青の「」の字形となっているものを見たことがあります。入稿データの該当文字を見ると、中国語繁体字のフォントが当たっていました。日本語フォントのスタイルを当てた内校ゲラは、青の部分が靑の「」(静の旧字)の字形になっていました。
これらは、原稿データ(word)では、中国語フォントSimSunやMicrosoft JhengHeiが使われていた部分に、DTPソフトで日本語フォントを当てたことによる字形の変化でした。中国語フォントでは「」「」で、日本語フォントは「」「」となっています。青と靑の字形の違いは、見落としにくい、はっきりした違いですが、見慣れない「」「」と出会うと、アレ?となります。なぜその字形となっているのか理由が分かると、著者の意図を把握し、どのように対応することが適切か判断することができます。
DTPも含めて、現代のコンピュータで文字を扱う際には、Unicodeに対応したフォントを使うことになります。そのUnicodeでは日本以外の国の漢字も扱う必要性から、C・中国、J・日本、K・韓国の漢字を統合した「CJK統合漢字」というものが使われています。
Windows等の環境で中国語フォントを使うことは、昔のようなハードルがなくなっているために、組版の素材データに、そのフォントにしないと出ない字形の1文字だけを中国語フォントにする、というものも時々含まれているかもしれません。
《参考》
・日本の文字とUnicode―第4回 漢字とUnicode(大修館 国語情報室、Web国語教室)、安岡孝一
~おまけ~
「青」「靑」の字形は、JIS漢字でも時代の流れの中で何度か変更されたもので、フォントにより字形が変わるので、校正時に気を付ける必要があります。
入稿Wordデータは、JIS2004対応の字形なのに、DTP側でNフォント以外の古いフォントを使うと、字形が変わるという、ものです(商品カタログ等ではデザインフォントとの字形の統一を図る上で意図的に古いタイプのJIS83系フォントを使う、としていることもあるようです)。
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