277. 蓮:しんにょうの点の数


高校社会の学参ものの入稿時に、蓮如さんの「蓮」(はす)の字で、しんにょうの点が2つの字形(辶)はありますか?と注記がありました。ハテ?この字で字形の変更の指示はそれほど見かけないような。なぜなのでしょうか(OpenTypeフォントには、その字形はあるはずだけれども)。教科書の表記に合わせるため、なのかもしれません。

「蓮」は人名に使える漢字として「人名用漢字別表」にありますが、こちらには1点しんにょうの字形が掲載されています。なので、2点しんにょうの字形は、いわゆる旧字体ということになるかと思われます。

「JIS X 0208およびJIS X 0213の字形・字体の変更点」より(https://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/ref/jisrev.html

「蓮」の2点しんにょうはJIS78の字形で、1点しんにょうはJIS83で変更された字形(拡張新字体とも:常用漢字で簡略化した部位を表外漢字にも適用したもの)です。その後、字形の変更はなく、現在では1点しんにょうの字形のみがWebブラウザやWordで表示されます。InDesigでOpenTypeフォントを使う場合は、字形パレットでJIS78の字形を選択することが可能です。ちなみに、1994年の新版漢語林では、1点しんにょう、諸橋大漢和辞典では、2点しんにょう、でした。

JIS78⇒JIS83で字形が変更されたものの一部は、JIS2000で78字形が復活したものがいくつもあります。よく使われる字としては、葛藤の「葛」があります。Lの中が人⇒ヒ⇒人と変わりました。正字体⇒拡張新字体⇒正字体と変ったとも言えるのでしょう。

なぜ、「蓮」はそのようにならなかったのか。しんにょうは包摂基準の1つとして、どちらも同じ文字とするという考え方があることも関係しているようです。以下の詳細な資料等をよく読むと、人名漢字やJIS漢字の変遷の中から、その理由の一端が垣間見える、のかもしれません。

〔参考〕

・人名用漢字別表の変遷、京都大学

 http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~yasuoka/kanjibukuro/japan-jimmei3.html

・日本の人名用漢字と漢字コードの齟齬、京都大学

 http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~yasuoka/publications/2019-07-26.pdf

・これまでの漢字政策について(付:人名用漢字・JIS漢字)、文化庁

 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo/kokugo_29/gijishidai/shiryo_7_2.html

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