191. 組版の校正でつけたい習慣
- 2018年05月22日
- 校正
何十年と同じ仕事をしていても、まだ改善する余地は多々ありそうです。というより、視力や集中力等が経年劣化してくる分を、新たな工夫で補わななければ、現状維持さえも難しいかもしれません。
◆前提
人間は集中力が途切れがち(目が“すべる”、という言い方もあるようです)。脳は見たいものしか見ていない、とも言われています。ここ二十数年では、テキストデータ支給での組版が主流になっていることもあり、1文字1文字を確実に見ていくのではなく、1行1行をスルスル・高速で校正するクセがついています。約物や記号等の和文・欧文の違いや、指示どおり上付き・下付き文字にしているか、文字化けがないか等を探していく作業が多くなっています。ただし、手書きの赤字の引き合わせ校正では、1字1字を確実にチェックするモードにチェンジしなければなりません。
修正が少ない時ほど、注意が必要です(アオリ検査を併用すると、ミスや組版上の不備を発見しやすいときも)。“間違えを見つけた直後で、見落としが多くなる”と、昔スクールで教わったとおり、その部分を見直すと案の定、ということもあります。
「注意が必要」と言うだけでは、ミスを減らし品質を上げる効果は期待できません。何か、習慣とする行動(駅員さんがホームで行う“指さし確認”のような;下記の下線部のような行動をクセにして、意識を呼び起こすことが必要かもしれません。
◆よい品質の校正とするために、「つけたい習慣」を4つあげてみます。
① | 1行1行、1字1字を細かく見る原稿・赤字との引き合わせ校正とは別に、肩の力を抜いてザっと見る校正、の計2回を行う。視点を変えて見ることで、違った景色が見えてきます。どのくらいの力かげんで、“ザっと見る”のかは仕事によって調整します。また、先にザっとか、後にザっとかは、それぞれの好みです。 |
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② | 校正の途中で、字形や約物の不統一等の不具合に気がついたときは、他にも同じ不具合があるかどうか、前のページに戻って、そのポイントのみに集中して見直すと、直しが必要な所がさらに見つかるものです。 |
③ | これは何だろう?!と思う不具合は、(身近にいて、聞けるのであれば)作業者にその理由を問うてみる。なぜその不具合が起きているのか原因が分かれば、他の部分で同様の間違いがある部分を見つけやすくなる。 |
④ | 赤字の引き合わせ校正の際には、(許されるのなら)チェック済みのゲラの赤字の箇所に、左手に持ったダーマト等で、チェックマークをつけながら、ひとつひとつに見落としがないように校正する。“『本のエンドロール』(講談社、2018年)ができるまで”、というドキュメンタリー動画の、内校の場面ではそのようにしていました。 |
このような習慣をつけることで、時間にせかされているとき、効率思考になっているときにも、より堅実な校正作業となる、とよいのですが。
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